エッセイ

-鋭意執筆中!-

“誰一人取り残さない”インクルーシブ防災

1.はじめに

兵庫県を襲った阪神・淡路大震災の発生から10年後の2005年、私たちは、震災の経験と教訓を世界に発信すべく、第2回国連防災世界会議を兵庫県神戸市で開催しました。ここで採択された「兵庫行動枠組」では、防災・減災を各国の主要施策として位置づけることを大きく打ち出しました。あわせて、復興や災害の予防に関する国際的な体制を構築するため、IRP(国際復興支援プラットフォーム)が設立されました。IRPでは、世界銀行の支援をいただきながら、兵庫県神戸市を拠点に、UNISDR、アジア防災センター、OCHA、WHOなどのこの地に所在する関係機関と協同しつつ、復興に資する人材の育成やノウハウの発信等の活動を続けています。

2.会議テーマ「強靱な復興のための包摂(Inclusion for Resilient Recovery)」

阪神・淡路大震災では6,400名を超える尊い命が奪われましたが、その半数が高齢者でした。2011年の東日本大震災でも、15,000人を超える犠牲者のうち高齢者が6割を占め、また、障害者の死亡率は全体の約2倍であったと言われています。

高齢者や障害者の中には避難所までたどり着いたにもかかわらず、十分な支援を受けられずにやむなく被災した自宅に戻ったり、過酷な避難所生活により二次的な健康被害を発症したりする事例が見られました。2016年に発生した熊本地震では、こうした震災関連死が直接死の約3倍にのぼりました。

このように、高齢者や障害者は災害時に非常に弱い立場に陥りやすく、犠牲も集中する傾向があります。

今回のテーマ「強靱な復興のための包摂」は、こうした課題に沿ったものであり、“誰一人取り残さない”というSDGsの基本理念にも通じるものです。第3回国連防災世界会議で採択された「仙台防災枠組」においては、女性、子供、高齢者、障害者など弱い立場に置かれやすい人々を、災害リスクを削減するための政策立案や実施過程に関与させるべきとも明記されています。強靱な復興の実現には、災害弱者の存在を念頭に入れ、計画や施策を進めていくことが欠かせません。

3.兵庫県の取り組み

兵庫県では、この認識のもと、“誰一人取り残さない”インクルーシブ防災(inclusive disaster risk reduction)の取り組みを進めています。

高齢者や障害者の避難支援には、地域コミュニティの協力が不可欠です。そのため、要介護や障害支援等の福祉関係の情報を、本人の同意を得て自治会等地域の避難支援者と共有するよう推奨しています。そして、その上で、一人ひとりにあった避難支援計画を作成し、誰が、いつ、どこへ、どの方法で避難するのかを定め、いざという時に備えています。また、作成にあたっては、対象者の実情を熟知したケアマネジャー等も協力し、より実効性のある計画に仕上げることを心掛けています。

また、兵庫県は、1999年に大地震の被害を受けたトルコの防災プロジェクトを支援し、そのなかで知的障害児向け防災教育を推進するなど、海外のインクルーシブ防災の取り組みも支援しています。

来年1月17日には阪神・淡路大震災から25年を迎えます。被災地の経験と教訓を活かした取り組みを国内外に発信していくこと、それこそが被災地の使命と強く認識し、この経験や教訓を「忘れない」「伝える」「活かす」「備える」をテーマに、兵庫県はこれからも世界の防災・減災対策の進展に貢献してまいります。

(世界復興会議クロージング・プレナリー・スピーチより)